技術記事
超高分解能TEM!球面収差補正走査透過電子顕微鏡
半導体産業の発展により高まる材料分析の需要
透過電子顕微鏡(TEM)は、微細構造や原子配列を観察するための最も一般的な分析手法です。 半導体、車載用リチウム電池、量子コンピュータ、III-V族化合物半導体、グラフェンを始めとする二次元材料などの新材料の創生に伴い、TEM分析の需要は増加し、電子顕微鏡に求められる分解能も高まっています。
電子顕微鏡の分解能を向上させるには?
TEM の収差を低減することが分解能を向上させる方法です。TEM の収差の主な原因は次の3つです。
1.非点収差 (Astigmatism)
2.色収差 (Chromatic Aberration)
3.球面収差 (Spherical Aberration)
非点収差は装置の非点収差補正機能で改善できます。色収差はTEMの電子エネルギーに関係します。 現在、ほとんどのTEMは電界放出電子銃を搭載しており、均一な電子エネルギーにより色収差を改善することができます。これは電子エネルギー損失分光法(EELS)の分析には有用ですが、TEMの空間分解能を大幅に向上させることはできません。したがって、球面収差を改善することがTEMの分解能を向上させる最も効果的な方法です。
超高分解能Cs-STEM
走査透過電子顕微鏡(STEM)においても同様に球面収差の改善により、装置の空間分解能が向上します。球面収差補正走査透過電子顕微鏡(Cs-STEM)は、新材料開発に有用な分析装置です。さらに、エネルギー分散型X線分光器(EDX)およびEELSを組み合わせることで、高空間分解能の組成分析が実現できます。
MA-tekは材料分析から始まり、MA(材料分析)、FA(故障解析)、RA(信頼性試験)、SA(表面分析)、CA(化学分析)などの技術を備えた世界クラスの分析ラボに発展しました。産業界、研究機関、学術界にサービスを提供するために、当社はCs-STEM 装置を導入し、お客様に専門的な技術サービスを提供しています。
Cs-STEMアプリケーション
MA-tekはCs-STEM分析技術で、さまざまな分析サンプルに対応し、お客様のニーズに応え続けます。以下に三つの事例を紹介します。
図1は、発光ダイオード(LED)のIII-V族半導体材料の構造を示した例です。高い空間分解能により、Ga原子とN原子の配置を識別することができます。各原子の位置が分ると、その配列の間隔や角度を計算し、GaN材料の結晶構造を推測することができます。 球面収差補正機能のない一般的なSTEMでは、Ga原子とN原子の位置を区別することはできません。 また、EDX機能付きCs-STEMでは、高分解能のEDX分析も可能です。
図1 III-V族半導体発光ダイオードの構造
炭化ケイ素は現在、高出力部品に使用されており、自動車用電子機器では人気のある材料です。 炭化ケイ素は複雑な結晶構造を持ち、主に2つのタイプに分けられます:
1.立方晶(Cubic):β-SiCまたは3C-SiC
2.六方晶(Hexagonal):α-SiC
SiCには200以上のポリタイプが認められており、その中でもより一般的な構造は2H、4H、6H、15Rです。 図2はCs-STEMで観察した4H-SiCの原子配列を示し、観察方向(スクリーンに垂直)は<11-20>方向です。
図2 4H-SiC材料の原子配列
図3は、車載用リチウム電池材料の分析結果です。 リチウム電池材料に含まれるLiは、EDXでは分析できませんが、EELSでは検出が可能であり、EELS機能を持つCs-STEMでは、L,Mn,Oなどの主要な材料の分布を同時に観察できます。さらに、EELSスペクトルからは、元素によっては化学結合状態の分析が可能です。
図3 車載用リチウム電池材料のEELS機能付きCs-STEM分析
MA-tek保有の原子分解能分析電子顕微鏡NEOARMは、球面収差補正による超高分解能観察に加え、EELS検出器も備えることで、お客様のニーズに応える最適なソリューションであり、構造解析ラボにさらなる解析力を付加しています。MA-tekは材料分析分野で主導的な役割を果たし続けます。