有機物を分析したい場合、その方法やツールはいくつもあります。では、どのように選択すればいいのでしょうか? |
有機物質の分析に最も一般的に使用されるいくつかの手法の簡単な紹介から始めましょう。最初のステップは、各手法の背後にある基本原理を理解することです。各手法の詳細については、タイトルをクリックしてください。
FTIRの基本原理は、干渉計を用いて干渉縞を生成し、それをフーリエ変換することで赤外スペクトルに変換するものです。
赤外分光光度計は、赤外光を吸収した物質に生じる化学結合の振動や回転のエネルギー変化を観測することで、有機官能基の同定や有機物質の定性・半定量分析を行うことができる装置です。さらに、特定の無機官能基の分析も可能です。
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FTIR赤外分光法は、試料間の比較だけでなく、データベースを利用して定性分析を行うこともできます。
X線を物質に照射すると、光電効果が起こります。これは、内殻にある電子が励起されて光電子が発生する現象です。試料の表面で発生した光電子だけが、物質から抜け出して検出されます。励起された光電子の運動エネルギーを分析することで、光電子の束縛エネルギーを知ることができます。
結合エネルギーは、元素や軌道に位置する電子によって異なります。そのため、結合エネルギーから光電子がどの軌道、どの元素から発生したものかを判断したり、結合エネルギーの変化から化学結合を調べたりすることができます。
![]() XPSは、有機化合物に含まれる元素の化学結合の分析を行うことができます。 |
GC-MSは主にキャピラリーカラムによる分離を採用しています。化合物によって保持時間が異なるため、分離後に質量分析計で分析することができます。
混合ガスがキャピラリーカラムを流れると、その混合ガスは構成分子の化学的性質の違いによって分離することができます。
そして、異なる化合物が異なるタイミングでカラムから流出します。下流の質量分析計で、この情報を収集・測定して比較します。
![]() GC-MSスペクトル 化合物によって、カラム内での保持時間(X軸)が異なります。保持時間の異なるマススペクトルを収集することで、データベースやサンプル間の比較により定性分析を行うことができます。 |
LC-MSの原理は、GC-MSと似ています。この場合、液体試料はキャピラリーカラムで分離され、質量分析計で分析されます。
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LC-MSスペクトル
スペクトルや固有のリテンションタイムから、既存文献との比較により化合物の構造を確認することができます。
試料物質に高エネルギーイオンを衝突させ、二次イオンを生成します。二次イオンは加速され、二次イオン質量分析システムに入ります。
異なる質量のイオンが同じ運動エネルギーを獲得した場合、質量の違いにより飛行速度や検出器に到達するまでの時間が変わります。TOF-SIMSではこれを利用して、質量電荷比の異なるイオンを識別し、精密な組成分析を行うことができます。
![]() TOF-SIMSは、微小領域の有機物汚染の分析を行うことができます。 |
各手法の基本原理を理解した上で、それぞれをどのような場合に使うと良いのでしょうか。 |
MA-tekの専門サポートチームへの電話の他に、手法を決定するためのいくつかの簡単なステップがあります。まず、分析しようとする物質が気体、液体、固体のいずれの状態であるかを簡単に判断します。
- ガス状有機化合物
この場合は、複雑なガス状混合物の分離・同定が可能なGC-MSが最適です。
- 液状有機化合物
この場合は、より適した分析方法として、FTIR、GC-MS、LC-MSがあります。FTIRは高速分析が可能です。主に高濃度(at%レベル)の有機物の分析に使用されます。化合物の赤外スペクトルをデータベースのスペクトルと比較することにより定性分析を行うことができます。
CG-MSやLC-MSはもっと時間がかかります。しかし、濃度の検出限界ははるかに低いレベル(ppm,ppb)に達することができます。そのため、低分子量(MW<500)の微量の液体有機化合物の分析に適しています。さらに、GC-MSは比較のためのデータベースが充実しているため、未知物質の同定にも大いに役立ちます。分析試料の分子量が大きく、標準試料がある場合は、LC-MSの方が適してます。
- 固体有機材料
この場合は、FTIR、TOF-SIMS、XPSなどが適しています。FTIRは主に有機材料の表面を分析するためのものです。特に表面積の大きな材料(50um以上を推奨)に適しています。一方、微小領域の有機物汚染を調べたい場合や、分析する有機物の濃度が低い場合(ppm、ppbレベル)には、TOF-SIMSとデータベースを用いて定性分析を行うことができます。さらに、TOF-SIMSは有機物の深さ分布を調べることもできます。
有機物中の特定の元素間の化学結合を分析したい場合は、化学結合の種類や比率を調べることができるXPSは非常に有効な手段です。
上記の簡単な選択ガイドによって、有機材料の分析を進める際の手法の選択が容易になったでしょうか?